歌姫の歌声 1 |
もう、あやふやな記憶だが俺が2,3歳の頃に聞いた歌。 否、ホントはあれは歌じゃなかったのかもしれない。あまりにも綺麗過ぎて、もっと別の、何かだったのかもしれない。 とか思えたらこんなにも悩むことは無かっただろう。だが、そいつは俺に、そう、「バケモノの俺に」歌を歌ってくれた。 あんときの俺は既に人間不信ってやつで俺の前にイキナリ現れたそいつにビビって逃げ出した。 一応、特上ぐらいの力があったが俺は九尾のこともすべて知っていたから、表と裏を作って極力表になっているようにしていた。 それに、小せぇ俺は精神がスッゲー弱かった。 また、何か言われる。また、殴られる。そう思うだけで体が勝手に逃げ出す。気付けば上忍並みの速さで走っていて、俺は急いでスピードを緩めた。 こんだけ走ったんだ、もう居ないはず。 と、気を緩めた時にまたそいつが現れた。 「ねー、何で逃げんの?人の顔見るなり逃げるなんて酷いじゃんか!せっかく私が歌を歌ってあげようと思ったのに!」 そう言いながらぷぅっと頬を膨らませたそいつは意外と可愛くて緊張しまくりだった体が一気に脱力した。 緊張が解けたせいか、それとも走りすぎて体力がなくなったのか、あぁ、両方かもしれないな。 とにかく足に力が入らねぇようになっちまってまだ話し続けているそいつに向かって俺の体は倒れていった。 「うわっ!どーしたの!?え!熱!?何?腹痛!?はぁ!?白血病!?」 「・・・・・・・・」 わかってはいると思うが一応断っておく。俺は熱があったわけでも腹痛があったわけでもましてや、白血病なんてなってない。 あいつがすべて勝手に思い込んで叫んでいただけだ。 「え!?大丈夫なの!?た、助けてください!!あ!バックミュージックは平井堅の瞳を閉じてでヨロシク!」 「・・・・・・・・だいじょうぶだってばよ・・・・・?(なんだコイツ・・・)」 「生き返ったのか少年H君!そうだぞ!!青春はまだまだこれからだぞ!!」 「・・・・・・・?(少年H君?)」 今思えばそいつはどっかのおかっぱ激眉に似ていたかもしれない。性格が。 テンションが高く表の俺でもついていくことはできなかった。 |