| 1 程よい風が通りぬけていった。 そう間もないうちにここにも冬が訪れるだろう。 まだ今は夏の名残がある。と、言うかここには寒い冬というものは来ない。 すこし肌寒くなるのだ。その程度。 三分の二は夏だし、三分の一は程よい秋と春、そして少し寒い冬だ。 一応、火の国と称されるここにも四季はあるのだ。 そして今は秋。 通りぬける風が大変心地好い。落ち葉が風に踊る様がなぜか癒される。 そんな季節だ。 足音を立てずに気配もある程度消して歩く私は、木の葉の里の新人中忍だったりする。 30にしてようやくなれた中忍だ。私の夢はアカデミーの教師になることだ。 30歳のオッサンが夢など、と娘に馬鹿にされながらも私はようやくここまで来た。 夢まで、後一歩である。 今日はCランクの任務一つだけだったので、さっさと済ませてのんびり散歩中だ。 本当にこの季節はいい。日々の心労がふっとんでしまう。 こんなことを言うとまた娘に馬鹿にされるのだろう。まあいい。 ふと、顔をあげてみる。綺麗な白い鳥が飛んでいた。ああ、のどかだ。 空も綺麗だ。微妙に顔が緩んでしまった。 前を向きなおして再び周りの景色を堪能しながら歩き出す。 今日は家に帰ったら家事を手伝ってやろう。なぜだかすこぶる気分が良い。 角を曲がるとはたけ上忍がいた。ビンゴブックにものるようなすごい忍だ。 はたけ上忍に憧れて忍を目指す人は少なくない。 ちなみにファンの数も少なくはない。娘もそのうちの一人だ。すこしうらやましい。 「はたけ上忍、こんにちは」 「やぁ、もう任務は?」 「はい。今日はひとつだけでして」 「へー」 それきりはたけ上忍は恐い顔をして黙り込んでしまった。 何か癇に障るようなことを言ってしまったのだろうか。 「あの…なにか」 「んー、いや何でもないよー」 じゃあ気をつけて帰ってねー。なんてオッサンにかけるとは思えない言葉をいただいて私たちは別れた。 あの沈黙が気になるが、家に帰ったら娘にはたけ上忍と喋ったことを自慢してやろう。 また蹴られるかもしれない。まあいい。 と、なにやら喧騒が聞こえる。 忍は里のために有れ、と小さく呟きながらそちらへ足を向けた。 ちょうど、第3演習所だった。 6人ほどの忍が何かを囲んで四苦八苦している。目を凝らすとさっき見た白い鳥のようだ。 近くにより、あの鳥がどうかしたのかと問うと捕獲したいらしい。 私も手伝うとしよう。鳥の捕獲はDランク任務で経験済みだ。 だが、おかしなことに誰も警戒して鳥に近づこうとしない。というか、何故クナイを構える。 なるほど!私よりも新人なのかもしれない。だとすれば私が行くべきだ。 「私が行きましょう」 そう自信満々に近くにいた二人の忍に告げ一歩前へ踏み出した。 近くで静止の声が聞こえた気がした。 もっとちゃんと話を聞いていればよかった。 というか、他人の任務に勝手に参加するんじゃなかった。 これだとまた、娘に馬鹿にされてしまうではないか。 まあいい。どうせ私は死んでしまった。 自信満々に前ヘ踏み出した勇気ある新人中忍は全身から血を噴き出して死んでいた。 (08.03.13)うーん |